プロスペクト理論とは?マーケティングに役立つ理論の基礎知識
こんにちは、髙藤です。
マーケティングを勉強しているということもあってマーケティング系のお仕事がくるようになったので、改めて顧客の心理について考えてみようと思い、以前大学で大苦戦したプロスペクト理論についてお話しようと思います。
行動経済学といえばプロスペクト理論といった具合で王道な理論であり、マーケティングをやっている方なら知っていると思いますが、今回は少し学術的な観点からプロスペクト理論について説明してみようと思います。
プロスペクト理論とは?
不確実性下における意思決定モデルの一つ。 選択の結果得られる利益もしくは被る損害および、それら確率が既知の状況下において、人がどのような選択をするか記述するモデルである。 行動経済学における代表的な成果としてよく知られている。
わかりやすく言えば選択肢のそれぞれの利益や損害、または起こりうる確率が分かっている状況で、じゃあ人はそれらの選択肢をどう捉え、何を選ぶのかを説明している理論といった感じです。
プロスペクト理論は大きく分けて二つの働きがあり、今日はそのうちの一つを用いて、それがマーケティングにどう関わってくるのか、というのを実例を交えてお話ししようと思います。
プロスペクト理論の働きその1:価値関数
この価値関数というのはグラフで表すことができ、以下の三つの特徴があります。(グラフは今回は省略します)
- 限界効用逓減の法則
- フレーミング効果
- 損失回避
限界効用逓減の法則とは?
何やら難しそうな言葉ですが、意味としては効用が段々と少なくなっていってしまうことを説明しています。
効用とは
消費者が財やサービスを消費することによって得る主観的な満足の度合い
を表しています。(goo国語辞書)
人は何か価値あるものを得ると嬉しいと感じ、満足しますが、その嬉しさ・満足度は得る価値の量が多くなるにつれて減少していきます。
何が言いたいかというとお金が0円の状態から5千円になるとなんかすごく増えた感じがして嬉しいのですが、9万円が9万5千円になる時は対して変わらないなと思ってしまうということです。もっとわかりやすく言うと、何も口にしていなかった状態からおにぎり1個もらうとめちゃくちゃ嬉しくて美味しく感じますが、おにぎり10個食べた後にあと1個あげるよ!なんて言われてもお願いだからやめてくれって感じで嬉しさは下がっていきます。(お金はいくらもらっても嬉しいのであまりいい例ではないですよね><)
では、以下の賭けについて考えてみてください
㊀8万円が確実に貰える
㊁80%の確率で10万円貰える
20%の確率で0円貰える(=何も貰えない)
こうしてみた時、どちらをとりますか?
この選択を迫られた時、多くの人が㊀を選択するということが証明されています。負ける確率が20%とはいえ、絶対に8万円貰えるって言われてるのにわざわざ2万円多くもらいたいがためだけに賭けになんか出たくないですよね。
これも限界効用逓減の法則です。8万円貰えるってわかってると、あと2万円もらえると言うことに対する満足度よりも、8万円もらえると言う満足度の方が圧倒的に多いのでわざわざ賭けになんか出たくないと考えるのです。
では逆に以下の賭けではどうでしょうか
㊂8万円確実に負ける(支払わないといけない)
㊃80%の確率で10万円負ける(支払わないといけない)
20%の確率で0円支払う(何も支払わなくていい、損しない)
こうなると私は㊃を取ってしまいますね。実際のデータでも多くの人が㊃をとることが証明されています。20%というわずかな確率ではありますが、それでもチャンスはあるということで、何も悪いことをしていないのにすんなりはい、8万円払います。すみませんでした。なんてならないですよね。(個人差があるかもしれませんが)
でもこれらの問題、きちんと計算してみると実は。。。
㊀ 80000円
㊁ 100000×0.8 = 80000円
0 × 0.2 = 0
㊂ – 80000円
㊃ -100000 × 0.8 = -80000円
-0 × 0.2 = 0
そう、二つともちゃんと確率を考慮して計算すると同じ値が導き出されるんです、㊀と㊁、㊂と㊃どれをとっても理論上は、得られる価値が一緒のはずなんです。
なのにこの二つの問題で人々は、一つ目では安定を選び、二つ目では賭けを選びます。
どうしてでしょう。それこそ、二番目のフレーミング効果が説明してくれているんです。
フレーミング効果とは?
損失が生まれるような状況では賭けをし、何かを得ることができるような状況では安定を選ぶ人々の心理について説明しています。
どういうことかと言うと、人は「勝つ」とか、「生きる」というポジティブな言葉を前にして何かを選択してくださいと言われると確実に勝ちたいから、生きたいから、安定を選ぶ傾向にあります。
逆に「負ける」とか「死ぬ」というネガティブな言葉を前にすると、負けたくないから、死にたくないから、という感じで一縷の希望を持って賭けに出ます。
そう、要は物は言いようってことです。これが、プロスペクト理論がマーケティングの世界でよく使われる理論である理由です。実際多くの場所でフレーミング効果を見ることができます。
損失回避とは?
続いて価値関数の最後の特徴、損失回避について説明したいと思います。
人は、何かを得ることに対して喜ぶよりも、何かを失うということをとても恐れ、それを避けるための行動にでます。
例えば、自分が所有しているものって愛着が湧いてなかなか手放したくなくなりますよね、昔から持っているぬいぐるみとか。それも損失回避で説明できることです。一度所有したものを失うことが怖いので、手放す事を避けるのです。
マーケティングで使える!プロスペクト理論の応用
ではここで、これらのプロスペクト理論の特徴を応用した実際の例をみてみたいと思います。
アメリカでの話なのですが、クレジットカードで支払いをするお客さんに対して手数料の支払いを課す際にどう言う頼み方をしたのかという話です。
クレジットカード会社としては手数料が利益になるのでなるべく手数料が欲しいですよね。なのでクレジットカード会社はショップに対して、クレジットカードで支払いをする客に対して手数料の説明をする時、なるべく払ってもらいやすいような表記の仕方をするように頼んだのです。
詳しく書きますと、クレジットカードで払う人に対して
- クレジットカードで支払う場合追加料金あり(コストがかかるので消費者にとってはネガティブな表記)
- 現金で支払うと5%お得(割引されるので消費者にとってはポジティブ)
と説明したところ、2番の表記をした時に、人がクレジットカードで払う傾向は強くなったというのです。
なぜかというと、お客さんがクレジットカードで払いますと言った時に「クレジットカードは手数料がかかるので○○円払ってください」と言われたら、お客さん側からしたら余計にお金がかかることになるので損した気分になるし、損はしたくないので「じゃあ現金で払います」となってしまう可能性が高いのです。逆に、クレジットカードで支払いますと言って、「現金で払うと5%お得ですよ」と言われると、確実に現金で払う方がお得だし自分にとっても利益のあるものですがなんかめんどくさいし5%って大して変わらないかな?となって、「いいです、カードでお願いします」となりやすいのです。
最後に
今回はプロスペクト理論について書いてみました。この理論はあくまでも理論的な話なのでいくら行動経済学とは言っても説明するのに限界がある時もあると思います。
しかし経済学では説明できなかった、というか無視されてきた人間の心理的なところがとてもよく説明されている理論だと思います。
とかなんとか言っておきながら人生で一番悪い点数を取ってしまったのもこの科目です。マーケター向いてないかな・・・
私は現在ネットで出品している商品の売り上げをより伸ばすにはどうしたらいいか、という案件を担当しています。
お客様が私たちの出品した商品をみた時にどんなワーディングだと買いたいって思ってくれるのかな。。とか、こういう理論を通して考えてみるのもいいなあと思います。